不当解雇問題解決の流れ
不当解雇の解消方法については,裁判所を使わない訴訟外の「交渉」による方法と,裁判所を利用する「労働審判」と「民事訴訟」による方法の3パターンがあります。
全体の流れ
まずはじめに,解雇されたのか(これから解雇されるのか),解雇理由が明らかにされているか(いかなる行為がいかなる根拠によって解雇となるのか)を確認します。
解雇理由が明らかになった時点で,当該理由による解雇が無効となる見通し,本人の気持ち(絶対会社に戻りたいか,金銭解決を望むのか),本人の生活維持の見通し等も踏まえて,上記3パターンのどの方法をとるか方針を決めます。

交渉
会社側にも代理人弁護士が付いている場合,弁護士間での交渉で解決する可能性もあります。交渉のメリットは,時間,費用,手間のコストが他の2つの方法に比べ,大幅に削減できる点です。他方,交渉を続けることは,会社の義務ではありませんので,会社が応じなければ最終的な解決はできず,労働審判又は民事訴訟を検討することとなります。
労働審判
裁判所を利用しますが,民事訴訟より迅速な解決を目指して出来た制度で,審理の回数(原則3回),審理の速度(平均75日で終了する。)に特徴があります。また,裁判官等が手続を進めますので,交渉より中立公正な手続が期待できます。労働者と会社のどちらかが審判に不服がある場合,民事訴訟に移行します。
民事訴訟
通常の民事裁判で解雇の無効を争う方法です。厳密な手続で解雇の有効・無効を判断していきますので,時間と手間は掛かります。もっとも,民事訴訟であっても判決まで行くことは珍しく,会社が解決金を支払い,労働者が退職に合意すると和解により終了することが多いです。なお,民事訴訟での和解における解決金の水準は交渉,労働審判より高い傾向にあります。
労働審判と民事訴訟の解決金額の差
解決金額の明確な相場や統計があるわけではありませんが,次のような平均値の集計資料があります。
A 月額請求 |
B 解決金・認容額 |
C 解雇から解決までの期間 |
(B/A)/C 標準化した解決金額 |
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労働審判 | 29.5万円 | 131.4万円 | 6.4ヶ月 | 0.69 |
裁判上の和解(*1) | 40万円 | 666.5万円 | 15.6ヶ月 | 1.06 |
判決 | 37.3万円 | 609.9万円 | 28.6ヶ月 | 0.57 |
(労働審判制度の利用者調査,実証分析と提言 有斐閣2013年)より
(*1) 裁判上の和解とは,民事訴訟を提起し,民事訴訟手続の中で和解に至ったものです。
解決金額は,裁判上の和解が最も高くなっています。民事訴訟を提起する人の方が労働審判を申し立てる人より月額請求が高く,また,解決までの期間が長いためですが,標準化した解決金(解決金額を賃金月額分に換算し解決期間で割ったもの)を比べても労働審判より遥かに高い数値となっています。
一方,判決まで進んだ場合,解決までの期間が大幅に長くなり,標準化した解決金を見てもパフォーマンスは悪化しています。
したがって,訴訟を提起し,裁判上の和解で解決した場合がもっともコストパフォーマンスに優れていると言えます。
なお,交渉による解決金額の集計はありませんが,2~3か月交渉して解決しなければ,労働審判なり民事訴訟に移ると考えられますので,労働審判,裁判上の和解での解決金額よりは低い金額となることが多いでしょう。
不当解雇の解決を目指す方へ
解雇事由の内容,依頼者のお気持ち,依頼者の置かれた状況を踏まえ総合的に検討し,どの手段で行うのが最善か検討しますので,お気軽にご相談下さい。 03-5293-1775