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不当解雇TOP  /  業務命令違反,上司の指示に従わないことを理由に解雇された場合

業務命令違反,上司の指示に従わないことを理由とした解雇

業務命令違反,上司の指示に従わないことを理由とした解雇が有効となる場合はどのような場合でしょうか。裁判所の判断基準を中心に詳しくみていきます。

不当解雇に該当するかどうか

雇用契約は,労働者が使用者に従事して労務を提供することを本質としますので,使用者は労働者の労務提供に対し,指揮命令権があります。そして,労働者が正当な理由なく指揮命令に従わない場合,会社の円滑な業務遂行に支障が生じるばかりでなく,これを放置すれば会社の秩序も維持できなくなります。

そのため,業務命令違反は懲戒処分の対象となり,業務命令違反を理由にする懲戒解雇も可能です。

しかし,懲戒解雇が有効とされるのは,①客観的合理性があり,②社会通念上相当性がある場合であり,業務命令違反を理由とする懲戒解雇においても同様です。

裁判所は,業務命令違反を理由とした解雇の有効・無効の判断において,以下の5点を重視しています。

  1. 業務命令が有効であるか
  2. 就業規則上,業務命令違反が懲戒事由とされ,懲戒処分の内容として解雇が明記されているか
  3. 業務命令違反の事実が存在するか
  4. 業務命令違反該当事実の内容・性質に照らして,解雇が社会通念上相当性を有するか
  5. 処分に至る手続が適正であるか

以下で1つずつ解説していきます。

1. 業務命令が有効であるか

そもそも業務命令が違法であれば,労働者はそのような業務命令に従う義務はなく,業務命令違反を理由とする解雇は客観的合理性を有しません。また,業務命令が法律に違反していなくても,指揮命令権の濫用(権利の濫用)と評価される場合,そのような業務命令は無効であり,無効な業務命令に違反したことを理由とする解雇も客観的合理性を有しません。

業務命令が権利の濫用といえるかは,a指揮命令権を行使する業務上の必要があるか,b指揮命令権の行使に不当な動機・目的がないか,c指揮命令権の行使が労働者に通常甘受すべき程度を著しく越える不利益を負わせるものかを検討して判断します。

具体的には,労働者を退職させるため(b),労働者に介護が必要な家族がいるにもかかわらず(c),人員補充の必要もない僻地に転勤を命じる配置転換命令(a)などが考えられます。

2. 就業規則上,業務命令違反が懲戒事由とされ,懲戒処分の内容として解雇が明記されているか

解雇には根拠が必要です。就業規則上,懲戒の対象となる行為として業務命令違反が明記され,業務命令違反に対する懲戒処分として解雇が含まれていることが必要です。

また,懲戒処分は,予め労働者に周知されてこそ,抑止力が働きますので,就業規則が労働者に周知されていることも必要です。

3. 業務命令違反の事実が存在するか

当該労働者に対し業務命令がなされ,労働者がこれに従わなかったという事実が証明されなければ,懲戒の対象となる事実が存在しないのですから,業務命令違反を理由とする解雇は客観的合理性を欠きます。
業務命令は,大きく次の3つに分けられます。

  1. 日常業務の労務指揮権に基づくもの(書類の作成,作業の指示等)
  2. 業務命令権に基づくもの(時間外労働命令,休日労働命令等)
  3. 人事権に基づくもの(職種変更・配置転換命令等)

1.から3.になるにつれ,命令の内容は労働者にとって重い負担が生じ,会社にとっても,1.から3.になるにつれ,拒否された場合の業務への支障が大きくなっていくと考えられます。

したがって,1.から3.になるにつれて,使用者側は,業務命令の発出,これに対する拒否の態度については,書面等の証拠化がなされることが多いでしょう。

4. 業務命令違反該当事実の内容・性質に照らして,解雇が社会通念上相当性を有するか

前述のように業務命令は3つの種類があり,拒否された場合の業務への支障の大きさは1,2,3により違います。それにもかかわらず,業務命令違反があれば一律に労働者にとって最も重い解雇が認められるのは不合理です。

一般的に,日常業務に関する業務命令(1)に違反したことを理由とした場合,命令違反による業務への支障は小さい上,より軽い懲戒処分である注意・指導,譴責,減給処分,降格処分等がありますので,いきなり懲戒解雇が有効と認められることはないといえます。

時間外労働命令等の業務命令に違反した場合,通常,譴責等の軽い懲戒処分で済み,解雇処分は社会通念上相当性を欠くことが多いとされます。

しかし,時間外勤務の必要性が当該労働者の手抜き作業を追完・補完するためであった場合,これを拒否した労働者の懲戒解雇を有効とした事例があります。

他に業務命令違反を理由とする解雇が無効とされた事例として,性同一性障害の労働者(男性)が,女性の容姿での就労を会社に申し入れたが会社から断れ,女性の容姿での就労を禁止する命令を受けたにもかかわらず,女性の容姿をして出社し続けたため,懲戒解雇された事案で,裁判所は,業務命令に故意に違反しているが,重大かつ悪質な企業秩序違反とまでは言えないとして解雇を無効とした事例があります。

配置転換命令等の人事権に基づく業務命令に違反した場合,業務命令が有効である限り(権利の濫用に該当しない),これを拒否した場合の業務への支障は大きいのが通常であり,業務命令違反を理由とする懲戒解雇も社会通念上相当性があると判断されることが多いです。

もっとも,配置転換の業務命令自体は必要性があり有効であったとしても,労働者に対し,配置転換を告げる際,配置転換後の処遇について,不正確かつ不安を煽るような説明(賃金が大幅に減額される等)をしたことが配置転換の合理性についての真摯な説明を欠き,労働者が業務命令を拒否するのも無理からぬ理由があったとして業務命令違反を理由とした懲戒解雇を無効とした事例があります。

5. 処分に至る手続が適正であるか

就業規則等に解雇処分に必要な手続(対象者に対する事情聴取や弁明の機会の付与)が規定されている場合,これらの手続が履践されていることが必要です。

必要な手続が踏まれていなかったり,形骸化したものだったことは,解雇処分が社会通念上相当性を欠いていると判断する一要素となります。

業務命令違反,上司の指示に従わないことを理由に解雇された方へ

日比谷ステーション法律事務所では,不当解雇の解決に向け,依頼者の利益のために最善を尽くします。
解雇事由の内容,依頼者のお気持ち,依頼者の置かれた状況を踏まえ総合的に検討し,どの手段で行うのが最善か検討しますので,お気軽にご相談下さい。 03-5293-1775
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