不当解雇の金銭的解決
不当解雇に対する慰謝料・損害賠償が最も多く獲得できるのは「民事訴訟」となります。
不当解雇問題の解決金額
不当解雇について金銭解決を図る上では,当該解雇が最終的(民事訴訟での判決)に法律や過去の裁判事例に照らして解雇権の濫用であり無効と判断される見込みがあることが前提であり,解雇が無効と判断される見込みが高い程,労働者に有利な金額で解決を図ることが出来ると言えます。
解決金の基準は賃金(給料)
解雇が無効であるとは,労働者がまだ会社の従業員であるということですから,労働者は会社に対し賃金の支払を請求する権利があります(労働者は会社で仕事をしていない以上,賃金は発生しないとも思えますが,労働者が仕事をしたくても会社がこれを拒んでいる場合,労働者の賃金請求権は消滅しません。)。したがって,解決金を考える際も,当該労働者の賃金額が基準となることが多いでしょう。
労働審判と民事訴訟の解決金額の差
解決金額の明確な相場や統計があるわけではありませんが,次のような平均値の集計資料があります。
A 月額請求 |
B 解決金・認容額 |
C 解雇から解決までの期間 |
(B/A)/C 標準化した解決金額 |
|
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労働審判 | 29.5万円 | 131.4万円 | 6.4ヶ月 | 0.69 |
裁判上の和解(*1) | 40万円 | 666.5万円 | 15.6ヶ月 | 1.06 |
判決 | 37.3万円 | 609.9万円 | 28.6ヶ月 | 0.57 |
(労働審判制度の利用者調査,実証分析と提言 有斐閣2013年)より
(*1) 裁判上の和解とは,民事訴訟を提起し,民事訴訟手続の中で和解に至ったものです。
解決金額は,裁判上の和解が最も高くなっています。民事訴訟を提起する人の方が労働審判を申し立てる人より月額請求が高く,また,解決までの期間が長いためですが,標準化した解決金(解決金額を賃金月額分に換算し解決期間で割ったもの)を比べても労働審判より遥かに高い数値となっています。
一方,判決まで進んだ場合,解決までの期間が大幅に長くなり,標準化した解決金を見てもパフォーマンスは悪化しています。
したがって,訴訟を提起し,裁判上の和解で解決した場合がもっともコストパフォーマンスに優れていると言えます。
なお,交渉による解決金額の集計はありませんが,2~3か月交渉して解決しなければ,労働審判なり民事訴訟に移ると考えられますので,労働審判,裁判上の和解での解決金額よりは低い金額となることが多いでしょう。
不当解雇に対する慰謝料・損害賠償請求
解雇により精神的苦痛を受けた等と賃金以外の損害賠償等の請求を考えている方もおられるでしょう。一般的に日本の裁判所は,精神的損害に対する金銭的評価は低いと言われており,金銭的解決の場合でも重視されない傾向があります。
もっとも,労働審判,裁判上の和解でも2割程度は,解決金額が解決時期までの月額賃金総額を超えています。月額賃金総額を超えた金額は,損害賠償等が解決金額に反映されていると考えられます。
慰謝料・損害賠償が多く取れるのは民事訴訟
労働審判は,月額賃金総額を超過した金額が賃金0~5か月分未満が67.9%と多く,裁判上の和解,判決では10か月以上が多くなっています。このことから,裁判上の和解,判決に比べ,労働審判では解決金における賃金総額以外の損害賠償等の水準が低いといえます。
不当解雇を金銭で解決したい方へ
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