早期退職優遇制度と不当解雇
早期退職優遇制度とは,会社が従業員に対し,定年前の早期退職を奨励し,退職する者には割増分の退職金を支給するなど好条件を提示し退職を募る制度です。組織の人員構成を整えたり,従業員の転進支援を目的とすることもありますが,実際は,人員整理(リストラ)政策の一環として行われることが多いです。
早期退職優遇制度の法的性質
雇用契約は労働者と使用者の合意によって成立する以上,雇用契約の解消も労働者と使用者との合意によって行われるのが原則です(合意解約)。他方,使用者の一方的意思で雇用関係を解消することを「解雇」,労働者の一方的意思で雇用関係を解消することを「辞職」といいます。
早期退職優遇制度は,制度としては,使用者が労働者に退職を求めるのではなく,労働者が使用者に早期退職を申し込み,使用者がこれを承諾することで,両者の雇用関係が終了することになります。
したがって,早期退職優遇制度による退職とは,法的には合意により雇用関係が終了(合意解約)することになります。
また,労働者が会社から個別に早期退職優遇制度を提示された場合,法的には使用者が労働者に対し,合意解約の申し込みをしないかと誘っていること(申込みの誘引)を意味します。
早期退職優遇制度に申し込んだ場合
早期退職優遇制度に申し込んだということは,労働者と使用者間の雇用契約は合意解約されたという外形が出来ます。
日本の法律及びこれまでの裁判例では,労働者保護の観点から,使用者が一方的に雇用関係を終了する解雇の有効性については厳しく判断してきました。他方,合意解約に対しては,雇用契約解消の原則形態であることから,合意を重視し,裁判所は,あとになって合意解約の無効を認めることに対しても厳しいといえるでしょう。
合意解約の無効が認められるには,早期退職優遇制度の勧め方が,あまりに執拗,高圧的など社会通念上相当性を欠いていたといえなければなりません。
早期退職優遇制度を勧められた場合の対応方法
退職するつもりがないのであれば,早期退職優遇制度を利用する意思がないことを使用者にはっきり伝える必要があります。書面で通知した方がよいでしょう。
また,使用者側が執拗に早期退職優遇制度の利用を求めてくる場合,その態様を証拠化した方がよいでしょう(録音がベスト,日時,場所,相手,態様の記録)。
他方,会社が執拗に早期退職優遇制度を勧めるということは,会社は当該労働者をそれだけ辞めさせたいと考えているのであり,早期退職優遇制度を拒むことで,会社が当該労働者を解雇するリスクも高まるといえます。
したがって,労働者としては,会社が労働者を辞めさせたがる事由に思い当たる節がある場合,その事由による解雇が無効と判断される見込みと退職金の上積み額によっては,早期退職優遇制度に応じることが労働者の利益になる場合もあります。
これらの判断は,弁護士に相談した方がよいでしょう。
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